情報社会学会 設立趣意書



20世紀の後半から、同時並行的に始まった新しい産業化の波(第三次産業革命)と情報化の波(第一次情報革命)は、21世紀にはいって、ともにその「突破」局面を迎えつつあります。この両者を不可分に結びつけているのが、グローバルな情報基盤としてのインターネットです。

この第三次産業革命を見れば、第一世代のIT革命は、米国を中心として行われましたが、第二世代のICT革命では、アジアが一つの中心となっています。日本は、外国の後追いではなく、また単なる技術の進歩でもない、人間の新たな価値創造をビジョンとする技術・システムについてモデルの創造を求められています。言い換えるならば、人間・社会のソリューションを提供する情報技術・システムのモデルづくりを目指す必要があります。

 人間の新たな価値創造、人間・社会の諸課題のソリューションを志向する情報技術とは、(1)経済発展と環境の両立する、真の生活の豊かさの実現に貢献すること、(2)高い付加価値を産み出す産業育成を通じて、社会経済の活性化に寄与すること、(3)高齢者や社会的弱者の自立支援と能力活用のできる共働社会システム形成の要となること、(4)安全・健全・健康なコミュニティづくりに役立つこと、などを可能にする、新たな社会システムの構築に貢献するものでなければなりません。

そのためには、1960年代からなされてきた閉鎖系のシステムとしてのコンピュータ化の推進ではなく、どこでも、何にでも、いつでもつながる開放系ネットワークを社会基盤とする在り方、すなわち、多種多様な知識情報が連携・融合して、新たな価値を創発する社会構造や環境づくりを推進することが大切になります。

産業技術の革命である第三次産業革命が、社会革命としての第一次情報革命と同時並行的に生じていることを考えるならば、このような努力は一層、その重要性を増すでしょう。第一次情報革命は、人びとの知力の増進と、それが引き起こす新しいアクティビズムの発現によって特徴付けられています。近代化の過程において、まず主権国家の形成と国威の発揚に、続いて企業化と富の蓄積に向けられた人びとのアクティビズムは、いまや説得力や影響力の発揮に、あるいは評価や名声の獲得に向かおうとしています。近代社会を形作ってきた「国民」や「市民」が、さらに「智民」へと進化していこうとしているのです。智民のアクティビズムが、どのような新しい社会――「情報社会」――を生み出すのか、その光と影はいったい何なのかを、私たちは真剣に研究していかなくてはなりません。さらに、情報化と産業化の関係や、変質しつつあるとはいえ決して終わった訳ではない国民国家化の動きと情報化の関係も、視野にいれていかなくてはなりません。このように、わたしたちの考える「情報社会学」は、21世紀の総合的な社会科学となることを目指しています。

わたしたちは、このような理念に共感される有志の方々と共に、「情報社会学会」を設立したいと思います。どうか奮ってご参加ください。

本学会の目的は、第一に、社会的な立場や世代を越えて、それぞれの知識や経験、問題意識を持ち寄って交流するための情報交換の場となることにあります。第二に、本学会は、このような情報や知識をもとに、先達よりさらなるご助言、ご指導を賜りつつ、各界の連携を通じて、学際的でグローバルな調査・研究を行い、その成果を学術論文や政策提言として広く公表することを目的とします。

わたしたちは、本学会の会員が共通の問題意識を持ち、各自の専門領域や経験を生かしながら、実りある共働研究を行うこと、また、本学会が「情報社会学」の名に相応しい新たな知の体系を生み出す場となることを願っています。


情報社会学会設立発起人代表

公文俊平(多摩大学情報社会学研究所所長)
大橋正和(中央大学総合政策学部教授・学部長)
村井 純(慶應義塾大学環境情報学部教授)
國領二郎(慶應義塾大学環境情報学部教授)

Copyright 情報社会学会  All rights reserved.